WORKS

シアテルすすきの札幌

余白の可能性

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シアテルすすきの札幌

余白の可能性

札幌市中央、すすきの地区にほど近い月寒通に面して建つ地元でも有名な築30年の飲食店舗ビルの再生である。かつてクラブとして賑わっていた3階ワンフロア全体は飲食店となっていたが、これをカプセルホテルを含む簡易宿所に用途変更する計画である。札幌市内のディベロッパーが所有し、地元でも飲食店舗としても待ち合わせスポットとしても愛されている建物には既に、様々な価格帯の様々な年齢層のための飲食店が混在しており、さながらすすきのの街を1棟の建物に凝縮したかのような豊かさを持っていたため、他テナントとの連携のとることができる運営と空間構成が求められた。また、運営委託として入居する運営者はシアター×ホテルをコンセプトにホテルを全国展開しており、特徴的なコンセプトのホテル運営ができる空間づくりが求められた。事業主×有名既存ビル×特徴的な運営主体、の3つのキャラクターを掛け合わせて生まれるユニークな空間づくりが課題であった。

ホテルの最大の特徴であるシアタースペースを半パブリックなイベントスペースとして空間の中央に配置し、24時間フレキシブル利用可能にしている。その周辺にカプセルルームとプライベートルームを配置し、イベントスペースはホテルのホワイエとしても利用可能とすることで特徴的なプログラムを空間構成で解決した。このフレキシブルスペースは、建物1階で待ち合わせ場所として市民に愛されているパブリックスペースの「写し」でもあり、この既存建物のDNAを継承する空間にもなっている。 飲食店舗ビルを簡易宿所に用途変更するにあたっては、実況に応じた積載荷重の検討と、保健所からの要請で設置が必要な開口を既存耐力壁に設ける構造的な検討を行い、建物の危険性が増大しないことを確認し、確認申請を行った。

本計画の最大の特徴である中央のイベントスペース/シアター/ホワイエの空間は、事業主、有名既存ビル、運営者の3社から見て重要な意味をもつスペースとしてできあがった。 事業主からすれば他階のテナント活性化を含めたビル全体の再生のハブとなる空間であり、有名既存ビルからみればすすきのの街の中で1階を大きくパブリックに開放した公共性あふれる空間が3階にも飛び火して派生した空間であり、運営者からすれば24時間人が滞在するホテルに掛け合わせて様々なイベント利用の企画運営が可能な収益のコアとなる空間となっている。3つの人格の重ね合わせによって、エリア再生・建物の履歴の踏襲・事業性の担保が可能となった、再生建築ならではの空間的ソリューションを提供することができた。

CREDIT
撮影:黒岩翼

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