WORKS
神田錦町オフィスビル再生計画
減築がもたらす公共的余白
WORKS
神田錦町オフィスビル再生計画
減築がもたらす公共的余白
竣工:
2022年5月
規模:
RC造 地上6階
延床面積:
602.57㎡
用途:
オフィス
築年数:
築53年
神田錦町にある築53年の違法建築を近隣に本社を構える安田不動産がまちづくりに活用するため,取得し,適法化する計画.また、両隣には公開空地が設けられていたが、本建物がそれを遮っていたため、有効活用がなされていなかった。
我われは違法状態を「減築」により適法化するプロセスによって,建物と周辺の公開空地,両方の価値を高める新たな公共性を生み出すファサードをつくることを試みた.
両隣の建物と同様にセットバックさせた位置まで床面積を減築させ,既存フレームはそのまま残すことで,セットバックさせた新しいファサードに既存フレームがオーバーレイした「厚みを持った表層」が公開空地に建ち現れた.
既存建物は専有面積を最大化するよう計画されており,共用空間は最小化されていた.減築により地階から全フロア貫通させたヴォイドは避難経路や縦動線,照明や設備といった共用空間とした。加えて、ヴォイド空間は北側採光を取り込み、ビル群によって生み出された風のウインドキャッチとなる環境装置として機能し、都市に露出している。
「減築」により生み出された「厚みを持った表層」は都市に公共的な領域を生み出し、オフィスや既存公開空地の価値を高める空間ともなっている.
適法化によるプロセスで建築と都市の骨格を更新させ、エリアに再生文化が連鎖するきっかけとなることを期待する.
既存外観写真
既存の内観。北向きで非常に暗い状態であった。
改修前後と工事中をまとめた動画.(撮影編集 コムラマイ 音楽 梅原徹)
法的な面積の齟齬を、単純に上層部を削るのではなく、潜在専有面積を作り出すように減築し是正。
外壁ラインがそのまま残っていることにより、実際の面積以上に広く感じる空間へと再生している。
既存の劣悪な執務環境を改善すべく構造躯体に新規に開ける開口を、風量解析のシュミレーションを行って決定した。
再生後の建物には西側の開口部から風が入り建物内を循環するようになった。
床の減築に伴いトップライトを設けることで、各階に安定した北側採光を届けることに成功した。
加えて、外壁を一部減築させ、フルハイトのサッシを設けることで、大きな気積を感じる明るい空間へと再生した。
トップライトとして解体され光が差し込む工事中の様子
岡田ビルは屋内避難階段を1つしか有しない既存不適格であった。
本計画では、既存不適格を維持しつつ、減築とあわせて自主的に2方向避難を実現し、煙の抜ける屋内階段と避難ハッチを計画した。
4階以上は既存階段の向きを90度回転させた屋外の階段を挿入。
高さ違反の是正に加え、煙の抜ける屋内階段を新設した。
各階バルコニーに避難ハッチを新設し、1方向避難でも既存不適格で適法であるものの自主的に2方向の避難経路を確保した
本計画では、避難経路とあわせ全体の動線計画を見直した。
4人乗りから9人乗りへのエレベーターのやり替えに伴い、その向きを変更し動線を大きく変更することで各階のエレベーターを下りた先に心地よいエントランス空間が生まれ、セミパブリック空間を作り出している。
減築によって生まれたバルコニー空間は、東西それぞれ「外のような内」と「内のような外」といった性格をもち、均質だった既存建物は二面性をもった空間に生まれ変わった。これらの2面性は、コの字型のワンルームプランによってグラデーショナルに繋がっている。
1969年に竣工した岡田ビルは旧耐震基準の建物であり、耐震診断および補強設計が求められた。計画前に構造調査を行ったが、圧縮強度は全て設計基準強度(Fc18)を上回っているが、東西方向については1階から5階までIs 値が現行法規における大地震時に必要な耐力とされる基準(2次診断IS 値0.6 以上)を下回っていることがわかった。
躯体の減築により、補強量を約30%に抑えることに成功
かつ躯体に新規開口を設けて隣地との連続性を実現
各階の減築により建物の荷重が大きく減少し、補強量が少なく済んでいる
減築を用いることで、使い方を制限しない最小限の耐震補強を実現し、IS値は0.6を大きく上回った。
既存の両隣公開空地は活用されることなく、また本建物が流れを遮るような建ち方となっていた。隣地には塀も建っていた。
1階の外壁ラインを大きくセットバックし、塀を一部解体することで既存の両隣公開空地を連続させた。
1階にはカフェが入り公開空地まで賑わいが広がっていくような計画
建物内に通したパス。
本計画に賛同したSDGに関連する企業の一棟借りが、計画段階で決定した。 1-2階には、日本初出店のthink coffee japanがカフェとして入り、周囲の賑わいに寄与している。
今回の計画をまとめたアイソメ図
CREDIT
TOP, 01~18 撮影:楠瀬友将