WORKS

オクシブビル 

意図せず生まれる特殊性

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オクシブビル 

意図せず生まれる特殊性

当初、事業者は別の設計会社に耐震補強計画を依頼していた。しかし、建物中央部に補強の鉄骨ブレースを設置する計画で利用上の制約が大きいため、入居テナントがつかず困っていた。そこで、改修後の建築、意匠計画を並行して検討しながら、耐震診断、補強計画の見直しを行った。

補強計画を見直すにあたって、建物中央部に補強が発生しないようにし、鉄骨ブレースを窓際に配置する。補強としては最も効率の良い位置では無いため、補強の総量は増えるが、内部空間の自由度は高くなる。 一般的に、建物外周付近のペリメーターゾーンは外部環境の影響を受けやすく、オフィスにおいて継続的な執務スペースとしては条件の悪い場所である。特に、本建物は東西面に窓が多く設けられて開放されており、日射の影響を直接受ける形となっている。そこで、フロアの東西面の窓際1mを、少し立ち話をする、休憩する、一人で作業するなど、ちょっとしたテンポラリーな使い方のできる場所として設えることを考えた。

本建物は柱面から1mほど外壁が片持ちで出ているため、窓際に補強を配置することで、補強と外壁の間は、一般的な執務空間としては使いづらくなる。しかし、補強の形状に少し手を加え、ベンチ、飾り棚、靴を脱いで上がれる小上がりといった、ちょっとした「きっかけ」をつくることで、一人で考え事をしたり、誰かとちょっとした会話をすることから新しいアイデアが生まれるなど、オフィスの創造性を高めるような付加価値のある場所となることを目指した。 工事予算に限りがあるため、内部空間はスケルトンをベースにしているが、熱負荷の高いペリメーターゾーンに限定して断熱を施すことで、効率的に熱環境を改善する。また、断熱する部分の仕上げを反射率の高い素材とすることで、ペリメーターゾーンが光を奥まで届けるための装置として機能する。

本建物の前面には、奥行6mもの空地が広がっている。

都心部において、道に面する1階部分は地価が高いため、建替えるのであれば出来るだけ1階を広くとる形で計画されるのかもしれないが、広い前面空地を残せることは、再生によるメリットとも言える。敷地内の空地であると同時に、都市の余白とも言えるこの場所を、ビルの入居者だけでなく、ここを訪れる人、街の人々が交流できるイベント空間として考える。建築物に該当しない、簡易な柱と梁だけで囲うことで、再生によって残った前面空地をひとつの場として可視化する。それによって、より多様な使い方をされることを目指し た。インターネット会議やPCの遠隔操作など、IT技術の発達により働く場所を選ばなくなってくるこれからの時代において、単に机を並べて作業するだけではない、実際に場を持って、人々が集まって働く「オフィスビル」のあり方を考える上での示唆につながることを願っている。

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