WORKS
(仮称)新中野豊国ビル再生計画
減築によりうまれた「ニワ」が働き方を豊かにする
WORKS
(仮称)新中野豊国ビル再生計画
減築によりうまれた「ニワ」が働き方を豊かにする
竣工:
2023年8月
規模:
鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根、地上11階
延床面積:
2,168.150㎡(減築後1,941.51㎡)
用途:
オフィス・店舗
築年数:
50年(1973)
青梅街道沿いの築50 年のSRC 造11 階建てオフィスビルの改修計画である。大きな是正箇所として、容積率の超過・違反増築があった。加えて旧耐震基準の建物であるため耐震補強工事が必要であった。
減築バルコニーにより既存建物のポテンシャルを引き出す
敷地は北側に幅員40m の銀杏並木が美しい青梅街道、南側は用途地域が切り替わり住宅地が広がる非常に見晴らしのいい場所に位置する。また、竣工時は容積率が700%だったが現在は500%に変更されており、周辺より高く建っている状態である。
容積率違反をしている部分の延床面積を減築する必要があり、北側と南側の外壁からセットバックした新しい外壁を建てる事で生まれた半屋外のバルコニーを利用者が自由に使えるスペースとして計画した。また、外壁をセットバックして屋外バルコニーにすることで建物全体の積載荷重を減らしている。
11階南側バルコニーから住居地域側を見る
屋上南側から住居地域側を見晴らすことができる
減築により正当化された空間
1階は、竣工時は駐車場だったが、長い年月の中で屋内化し店舗として使用され、建物全体の容積率が違反状態であった。上階で減築し容積率を減らすことで、1階を新中野の地域に親しまれる小さな店舗が入る横丁のような計画とし、歩道を広げた三角形のエントランス空間から、南側の庭まで誘導する様な廊下に店舗が面する平面形状とし、開口部と専用の設備もそれぞれ用意している。また北側の屋内階段下のデッドスペースにも小さな店舗を計画した。商業地域と住宅地域を繋ぐように南北にパスを繋ぎ、どちらも表にできる計画とした。
階段下を有効活用した7 ㎡の店舗
既存躯体と新たに挿入する壁面
新たに設けたセットバック外壁や事務所の間仕切り壁は、既存躯体のグリッド状の梁から合わせながらもズレるように配置した3 つの大きさの異なる菱形をモチーフにしたラインを元にしている。それによって生まれる鋭角部分と鈍角部分は、均質な空間の中にも不均質な多様な空間を作り出し、事務所スペースとしての矩形を確保しつつも、人の溜まる居場所空間と視線の流動を促す移動空間の両方を満たすような共用空間と専用空間を裏表で作り出している。
北側を屋内から見る
減築バルコニーによる避難経路の確保
既存時は平面計画上、各室から1 つの避難階段にしか直接到達できず、現行基準で求められる2 以上の直通階段が確保できていない状態である。改修後も建築基準法上では既存不適格状態だが、南北に廊下を通し、南側バルコニーに避難ハッチを設けることによって自主的に二方向避難を確保している。
共用部と潜在専有面積の確保
再生前は専有部を確保することを重視した中廊下型だったが、今回は南北の減築バルコニーとそれを繋ぐ廊下等の共用部を作ることを優先してプランニングした。廊下には風が抜け環境も良くなった。再生後のレンタブル比は再生前より減少しているが、共用部が多くなったことで入居者が自由に使える潜在専有面積は増え、賃料も潜在専有面積を含んで設定している。
共用部水まわり
北側バルコニー開口
CREDIT
撮影:Kenta Hasegawa|TOP,01-16